パロマ 2

1200万台不完全燃焼無事故、それが今回の問題を引き起こしたのだと思う。無事故のプレッシャー。そして、発表すべきものを無駄に隠して問題を大きくした。
不正改造以外に劣化による事故があったとパロマが認めた。

 パロマ名古屋市)が販売した瞬間湯沸かし器で一酸化炭素(CO)中毒事故が相次いだ問題で、同社は18日、経済産業省から指摘された17件以外に10件の事故が起こり5人の死亡者が出ていたと発表した。判明した事故は計27件、死者数は計20人。同社は事故原因を安全装置の不正改造としていたが、製品の経年劣化など自社に起因する事故があることを認めた。
(中略)
 事故原因は、14件が「安全装置の不正改造」としたが、残り13件は「改造にかかわらない」とし、うち4件については「経年変化による安全装置の劣化」と説明した。
 経年劣化のうち2件は機器のコントロールボックス内の基盤に小さなひびを確認。ひびにより排気ファンが動かなくなるのに、安全装置が働かずにそのまま機器が作動し、排ガスが室内に漏れた可能性があるという。
(日経新聞 7月18日 http://www.nikkei.co.jp/news/main/20060718AT1G1803118072006.html)

それにしても、1200万分の13、本来なら誇れる数字である。パロマの事故はLPガスだが、都市ガスによる一酸化炭素中毒死亡事故は10年間で300件以上発生しているという。(経済産業省 都市ガス事故情報データベース 2002年)(←2007年3月に発表されたデータと合いません。出典あるいは期間が間違っていたものと思います。経済産業省が今回出した数字は、不完全燃焼が原因のCO中毒死亡事故が、1986年から2006年の21年で239件発生、355人死亡だそうです。) パロマは25年で1200万分の13。13という数字がさらに増えるかもしれないが、悪い数字でないということに違いはないだろう。対応さえ間違えなければ、早い段階で世間に公表していれば、おそらく一度の記事で終ったはずだ。それが、こんなに大きな問題になってしまった。
さらに次の記事が事実なら最悪だ。

 パロマ工業製の瞬間湯沸かし器で一酸化炭素(CO)中毒による死亡事故が相次いだ問題で、販売会社のパロマが1980年代、修理を手掛ける「パロマサービスショップ」に、安全装置に連動する「コントロールボックス」(制御装置)を通さずに配線する不正改造を促す文書を配布していたことが20日、警視庁捜査1課の調べでわかった。
 同課はすでに、関係者から、この文書の任意提出を受けている。同社製湯沸かし器の不正改造を巡っては、修理業者から、コントロールボックスの在庫不足が背景にあるとの指摘が出ており、同課は、パロマが在庫不足を補うため過去にこうした文書を配布したことが、安全対策の遅れにつながったとみて捜査を進めている。
(読売新聞 7月20日 http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060720it07.htm?from=top)

文書公開希望。書いたバカの釈明会見希望。これが事実ならパロマ痛恨の一撃だ。
このような重要な記事がパラパラと出てくるのだが、圧倒的に多いのは頭の悪そうな記事。

パロマ湯沸かし器 不正改造周知「効果ない」 品質管理部長が証言
 パロマ工業名古屋市)製の湯沸かし器による一酸化炭素(CO)中毒事故が相次いだ問題で、事故原因となった不正改造の発見方法について、同社品質管理部長が事故に関する札幌地裁の民事訴訟で「一般ユーザーに知らせても効果は少なく、社内で検討したこともない」と述べていたことが明らかになった。顧客への周知をおろそかにし、事故の続発を許した同社の姿勢があらためて浮き彫りになった。
 一九九五年に恵庭市で起きた事故をめぐる民事訴訟で、品質管理部長(当時)は二○○○年十月の口頭弁論に出廷し、証言した。
 部長は、湯沸かし器の燃焼中にコンセントを抜けば不正改造の有無を見分けられるとしたうえで、「販売店などにお願いして見てもらっていた。一般ユーザーに知らせても、それほどの効果はないと考えた」と発言。改造をだれが行ったかの調査についても「器具の欠陥ではないので、一件ずつ調査するということはしなかった」と話していた。
 また、部長は、不正改造を引き起こす要因となった「コントロールボックス」周辺の故障について、九三年から九七年ごろまで年間に約千三百件あったとし、三分の一で、ボックス内のはんだ割れを見つけたという。
 コントロールボックスは、排気ファンやガス供給を制御する安全装置の役割を持つ。ボックスの故障で作動しなくなった湯沸かし器を使えるようにするため、不正改造が繰り返された。
 部長は、燃焼に伴う湯沸かし器本体の温度差によってはんだ割れが起きるとし、「寒いところは暖かいところに比べて温度差が広い分だけ多くなると思う」と証言していた。
(北海道新聞 7月20日 http://www.hokkaido-np.co.jp/Php/kiji.php3?&d=20060720&j=0022&k=200607206683)

品質管理部長が言ってるのが正論だ。この前も書いたが、周知しても事故はほとんど減らない。世間とマスコミの許さない事故が減るのだ。それを効果と考えるなら顧客に周知させることが効果的であり、実際そうすべきなのだが、事故の減少を効果と考えるなら専門店に周知させる方が効果的である。顧客が知っていれば多くの事故が防げたというのなら、多くは顧客が改造して事故を起こしたということになる。そういう情報があるのであれば、そうはっきりと書いてほしい。

パロマ事故、基板構造にも問題か…不正改造と複合要因
 パロマ工業名古屋市)製の瞬間湯沸かし器による死亡事故が相次いだ問題で、複数の修理業者が、警視庁捜査1課の調べに、安全装置と連動する「コントロールボックス」(制御装置)の構造上の問題点を指摘する証言をしていることが18日わかった。
 1992年に札幌市で2人が死亡した事故の高裁判決も、「はんだ割れ」が原因の一つとして認定している。
 捜査1課は、一連の事故は、コントロールボックスの構造上の問題や、修理業者による配線の不正改造など複合的要因で起きた可能性が高いとみて、同社の製造者責任についても捜査を進める。
 東京都内で起きた3件の死亡事故のうち、96年3月に港区赤坂のマンションで男性が死亡した事故で、同課が湯沸かし器を鑑定した結果、コントロールボックスに不具合が見つかった。
 安全装置は排気ファンが作動せずに内部が過熱すると、コントロールボックスを通じガスを止める仕組み。しかし、問題の湯沸かし器は、コントロールボックス内の基板異常で、湯沸かし器が正常に作動しなくなっていたのを、端子を針金でつなぐなどしてガスが止まらないよう改造されていた。昨年11月の港区南麻布の死亡事故でも、同様の改造が見つかった。
 これについて、同課が、補修した複数の業者に事情聴取した結果、同社製の湯沸かし器は「コントロールボックス内のはんだ割れが多い」「耐用年数が短い」などという証言を得た。
 一方、92年4月に札幌市で男性ら2人が死亡した事故を巡り、遺族が販売会社のパロマ名古屋市)などを相手取った損害賠償訴訟の札幌高裁判決(02年2月)も、「はんだ割れ」を補修した際の不正改造が一酸化炭素(CO)発生につながったと認定している。
 捜査1課は、同社製湯沸かし器のCO中毒事故について、〈1〉コントロールボックス内の「はんだ割れ」で故障が多発〈2〉修理業者が排気ファンが停止してもガスが供給されるよう配線を不正改造した――など複合要因が絡んでいるとみている。
(読売新聞 7月18日 http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060718it06.htm?from=top)

なんで「基板構造にも問題」になるのか全然わからない。はんだ割れがおきるから危険な不正改造をしなければならない。故障率が高いと危険な不正改造をしなければならない。耐用年数が短いと危険な不正改造をしなければならない。それは「基板構造にも問題」ってことなのか? だったら故障することは悪だ。故障する機械は法律で販売を禁止した方がいい。
(1)だから(2)をしようというように発想が進む場合、故障しているのは基板よりもむしろ脳味噌。